骨髄細胞、末梢血液細胞の減少をきたす放射線傷害からの回復を促進するために、呼吸代謝系賦活剤、免疫機能賦活系薬剤、即ち細胞膜の修飾剤であるセファランチン、電子伝達系の賦活剤であるチトクロ-ムC、種々の免疫系賦活剤とも云えるリンフォカインの中より、インタ-フェロン(IFN)、インタ-ロイキン-2(IL-2)について個々に検討してきた。 本年度は、セファランチン、チトクロ-ムCの併用の検討の継続と、糖代謝賦活剤塩酸メクロフェノキサ-ト、脂質代謝賦活剤シチコリンの併用を検討した。マウスの全身照射線量が低線量であるときは、個々の薬剤でも軽度の回復促進効果を示したが、高線量になると効果が減弱した。代謝賦活剤の4剤の併用では200cGyでは、白血球、骨髄細胞ともに回復促進が認められたが、300cGy照射では白血球の回復促進は認められず、骨髄細胞のCFU-Sの回復が軽度に認められた。 IFNは、照射後投与では、白血球、リンパ球、骨髄細胞共に著明に抑制されて、目的に適しなかった。 そこで、IL-2を代謝賦活剤の4剤との併用で検討した。IL-2単独では、骨髄細胞の軽度の回復促進を300cGy照射で示したのみであったが、この併用系では他実験群に比較して、末梢白血球の著明な回復促進効果が認められた。しかし期待に反したことはIL-2のT細胞増殖活性が出現せず、顆粒球の著明な回復促進が認められたことである。これはこれまで知られていない新知見である。 チトクロ-ムCの臨床的検討では、白血球の回復促進効果が軽度であるが、統計的に有意性をもって認められた。リンパ球、T細胞の回復に関しては、照射終了時と、その4週後では若干の回復が認められたが、統計的有意性は認められなかった。
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