研究概要 |
pale soft exudative(PSE)筋肉のブタ(いわゆる"ムレ豚")はpig stress syndrom(PSS)のブタに好発し、肉質の低下や頓死を来すので、この系統のブタを予知し、排除する試みがなされている。PPSはブタA-O式血液型の特定の亜型と遺伝的にリンクしているが、それらの血液型抗原の物質的本体は知られていない。初年度は、ブタ赤血球膜の中性糖脂質の組成を検討する中で、A型およびH型活性を示す糖脂質をそれぞれ単離した。これらの構造を1.プロトンNMRスペクトルの測定 2.α-N-アセチルガラクトサミニダ-ゼとα-フコシダ-ゼ処理によって得られた生成物についての固相免疫染色法 3.FABマス分析 4.非還元末端からの逐次加水分解 5.GC/MSによるメチル化分析によって調べた。その結果、いずれもラクト系糖脂質(A型:IV^2Fucα,IV^3GalNAc αLc_4Cer,H型:IV^2Fuc αLc_4Cer)であることが明かとなった。AとH型血液型糖脂質は種々の組織から単離されているが、ラクト系に属する赤血球のH型血液型糖脂質は、本研究においてブタから初めて単離された。今年度は、ブタ血球抗原は血清から取り込まれたか否かを実証するために、血清中の血液型活性糖脂質の単離を行なった。前年度の赤血球膜での方法に従って糖脂資質を分画精製し、A型およびH型活性糖脂脂質を得た。これらの構造を検討した結果、いずれもラクト系糖脂質であり、それぞれを赤血球のものと比較すると、構成脂肪酸に若干の違いはあるが、糖鎖構造は全く同一であった。新生ブタの赤血球は抗原性を持たないことが知られているが、ヒトのLewis抗原の場合と同様に、ブタの血球抗原は血清からの取り込みによって血液型を表現することが明かとなった。
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