花芽分化に低温処理と長日条件を必要とするチコリを用い、RiプラスミドT-DNAによる形質転換体を作成したところ、低温処理を施さなくとも常温(28℃)下で花芽分化し、開花に至った。また、T-DNA上に存在するrolC遺伝子のみを導入したチコリ形質転換体も常温下で花芽分化した。そこで、非形質転換(正常)体チコリを各種生長調節物質で処理し、常温下での花芽分化について検討した。その結果、低温処理を施さなくとも花芽分化を誘導できることが従来報告されていたジベレリンは茎の伸長を誘導するものの花芽分化を誘導することはなかった。逆に、抗ジベレリン剤としして知られているS-3307を処理したところ、率は低いものの花芽分化する個体があった。また、RiプラスミドT-DNAで形質転換したチコリをジベレリンで処理したところ、花芽分化はみられなかった。このことから、RiプラスミドT-DNAの生理機能はジベレリンの合成抑制あるいはジベレリンの活性抑制(ジベレリンの活性に拮抗する物質の合成)であると考えられる。T-DNAで形質転換(矮化)したベラドンナの内生ジベレリンについて抗体を用いたラジオイムアッセイ法により検討を行ったところ、主要なジベレリンはGAであり、非形質転換(正常)体ベラドンナも同様であった。しかし、GA含量は両者で大きく異なり、形質転換体では正常体の百分の一以下であった。このことから、RiプラスミドT-DNAの生理機能は内生ジベレリンの量の低下によってもたらされたと考えられ、現在、T-DNAに存在するrol遺伝子がジベレリンの生合成を抑制するのかあるいはジベレリンの分解を促進するのかについて検討を進めている。 一方、各種植物についてRiプラスミドT-DNAによる形質転換体を育成しているが、矮化が起こると同時にはかの他の形質が劣化するため、このままでは育種に利用できず、rol遺伝子を少し改良する必要がある。
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