本研究の主眼点である相互依存効用関数における、他者に対する限界効用は、社会経済的ネットワークを解析することによって導出されると仮定されている。その社会経済的ネットワークが単一である場合、多くのアドホックな手法によって、任意の二者間の関連度を導き出せるが理論的基盤が弱く、ただちに、それを限界効用パラメーターに結びつけるのは困難である。とくに、社会経済的ネットワークを構成する際の質問事項に対する、解答者の主観が、二者間の関連度の導出に全く考慮されないでいることがあげられる。本研究においては、上記の点に着目し、まず単一ネットワークに対して序列的反応アプローチを用い確率論的展開手法で、システムの構成者を二次元空間に配置し、構成者の「パーソナルスフィア」を考えることにより、効率良く、ネットワークを再現する方法を考案した。成果は下記論文1にまとめあげ、応用上問題となる確率を数値積分により求め、近似的確率分布関数を導出し、フォートランプログラムを開発し、論文2にまとめあげた。 システム構成員の社会経済的相互依存関係は、単一の社会経済的ネットワークでは代表しえないことは明かであり、重層ネットワークを考慮する多くの手法が開発されているが、それらはやはり、アドホックなもので、それらを統合する理論的根拠に乏しい。故に、論文1の後半において前述の方法を拡大し、重層的ネットワークを統合しうることを理論的に明かした。応用プログラムは、論文2のプログラムを若干改良すれば容易に得られることも判明している。 そして最後に、相互依存効用関数として相対所得を考慮することは、所得分布の不平等尺度であるジニ係数を再解釈し、主観的要素を明確に導入した、一般化ジニ係を考案したことにより、主観的相対所得が個人の相互依存効用関数と密接な関連をもつことが明かにされた。
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