マウスのエリスロポエチン(EPO)感受性及び非感受性赤芽球細胞株から、発現ベクタ-pCDSRαに作成されたcDNAライブラリ-を、20個ずつのプ-ルにしたcDNAをマウスL細胞にトランスフェクション後、^<125>エラベルしたEPOで結合能を調べる方法でスクリ-ニングを行った。その結果、完全長cDNAを複数単離した。その全塩基配列を決定し、そのアミノ酸配列を決定した。その結果、507個のアミノ酸から成る分子量55000の蛋白質に、一ケ所のトランスメンブラン部位を持つ糖蛋白質であることが判明した。また、非感受性細胞から単離された遺伝子は、感受性細胞から得られたcDNAと、3ケ所で塩基配列の違いが見い出されたものの、アミノ酸配列を置換するものではなく、蛋白質は全く同一の構造であることが判明した。更に、この受容体蛋白質には、チロシンキナ-ゼを始め、何ら酵素活性を持つドメインは見い出されなかった。しかし、他の造血因子、1L3、1L4、1L2受容体βサブユニットの構造と、一部相似しているところがあり、細胞膜受容体を介したシグナル伝達には、共通のメカニズムが関与している可能性が示唆された。L細胞膜上に発現させた受容体の解離定数を、スキャッチャ-ドプロットで求めた所、ほぼ天然型の受容体と同等の解離定数であった。EPO受容体を、1L3依存性細胞分株に導入発現させると、EPO依存性に増殖するが、赤血球への細胞分化は誘導されなかった。従って、EPO受容体は、赤芽球では細胞分化のシグナルを誘起するが、他の細胞系では増殖シグナルを伝達することになり、細胞特異的なシグナル伝達の機序の可能性が示唆された。
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