1.ヨ-ロッパ中世の代表的な論理学教科書『ヒスパ-ヌス・論理学小論集』を初期刊行本にもとづき解読翻訳した。また解題を付した。この仕事は『中世思想原典集成』第19巻(平凡社)の一部として刊行予定。この巻の他の担当者の原稿が未完成のため、刊行日時は未定。 2.ライプニッツによる易の論文の翻訳と解説は『ライプニッツ著作集』第10巻の一部として平成3年12月工作舍々ら刊行。 3.古代中国の論理学者『墨子』と『公孫竜』は原典校訂とその翻訳・解説は完成したものの、出版社がみつからないため刊行未定。 4.論文「義務論理学史素描」は20世紀になって開発された義務論理学の前史を叙述したものである。まず義務論理学的発想をカント、ベンサム、ヴォルク、ライプニッツといった近世の哲学者において探り、さらにその源流をキケロとアリストテレスにおいてつきとめることができた。この仕事は世界で最初の仕事であり、他に類をみない論文である。 5.論文「普遍的観点からみた象徴天皇制」はヨ-ロッパの王制もしくは皇帝制の論理構造と日本の天皇制の論理構造を比較したものである。その結果、古代あるいは封建時代においてはヨ-ロッパと日本の王制には大きな違いがみられるが、近代、特に第二次大戦後のイギリス王制と日本の象徴天皇制とはよく似た構造をもつようになってきたことが判明した。特に日本の天皇制の特色とされる象徴概念の出所が明らかとなった。 6.論文「形面上学の虚妄性」はプラトン、アリストテレス以来のヨ-ロッパの形面上学が、20世紀における論理学の技術革新によって掘り崩されてしまったことを論証したものである。この論文によってヨ-ロッパ哲学およびそれにもとづく一切のヨ-ロッパ文化が終焉したことが明白にされた。
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