本年度は六朝隋唐における道教の存思法と仏教と止観法、及び道教の〓斎の儀礼と仏教の懺悔法に関する資料を収集し、道教と仏教の修道法と儀礼に関する類似点と相違点について比較検討を行った。 その成果の一部として、天台智〓の法華懺法・方等懺法・観音懺法・金光明懺法等の懴法儀礼において重要な地位を占めている「奉請三宝」の儀式が、道教の〓祭の儀礼を模倣して形成されたものであることが明らかにされた。この研究成果により、これまでほとんど未解明のままに残されてきた。中国仏教の形式と発展に与えた道教の影響が一部分なりとも具体的に明らかにされ、今後の中国仏教の研究にも新しい視点を提供することになった。本研究の成果の一部は平成3年7月20日・21日に開催される日本印度学仏教学会第42回学術大会において発表される予定である。 また、研究代表者の過去10年間にわたる道教研究の成果をまとめた『六朝道教史研究』が創文社より東洋学叢書の1冊として平成2年11月30日に公刊された。本書には昭和63年度の研究成果「東晋期の道教の終末論」と「劉宋期の天師道の終末論」、平成元年度の研究成果「上清経と霊宝経の終末論」が補正を加えられて収められている。更に、本書の索引は書名・人名・神名・事項から構成されており、道教事典のない現在、それに代わり役割を果たすことを意図して作成されており、道教研究者に大いに役立つものと考えられる。
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