研究概要 |
ク-ルマプラ-ナは,みずからパ-シュパタと名乗る一種のシヴァ教徒の作であることはまちがひないが,一部には明らかにヴィシュタ教のパ-ンチャラ-トラ派の影響が認められる。ク-ルマプラ-ナ編纂に関わる,シヴァ教とヴィシュタ教の交渉について,本年度若干の考察を試みたが,明確な結論はいまだ得られてゐない。しかし,ク-ルマプラ-ナのシヴァ教の一派の諸特色を吟味したところ,同派の他派に対する態度は大むね宥和的なものであり,かつ正統的な婆羅門教の伝統をも尊重するものであることが,少しずつ明らかとなってきた。したがって,このやうな宥和的なシヴァ教徒が,部分的にヴィシュタ教的要素を採り入れたといふことは,必ずしも怪しむべきことではない。次年度は,このやうな考察を基にして,ク-ルマプラ-ナの宗派的背景をさらに解明してゆくつりもである。 本来、本年度中に,ク-ルマプラ-ナとプラ-ナパンチャラクシャナとのテキスト上の関はりを,細部に至るまで闡明する予定であったが,この方面の調査は思ふようになしとげることができず,次年度にひきつづけてテキストの比較吟味の作業を行ひたい。
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