今年度は昨年度に引き續いて、ク-ルマプラ-ナ編纂過程におけるパ-ンチャ-ラ-トラ派的ヴィシュヌ教徒の役割について考察した。同プラ-ナ編成におけるパ-シュパタ的シヴァ教徒とパ-ンチャラ-トラ的ヴィシュヌ教徒の關係はきわめて複雑であり、全體としてはシヴァ教徒的であるク-ルマプラ-ナの編纂のどの過程においてだれがヴィシュヌ教徒的部分を編入したのかは、たやすく解明しえない。今年度はそこでク-ルクプラ-ナといふ題号および全プラ-ナの枠となるク-ルマ化身について叙述に注目した。ク-ルマとはヴィシュヌの化身の一つであるが、全プラ-ナがこのク-ルマ化身の教説として編纂されてゐることは、同プラ-ナがヴィシュヌ教徒の作であることを決して意味しない。むしろシヴァ教徒的内容をヴィシュヌの一化身ためク-ルマが語るといふ全體の構成にこそ、シヴァ神の優立を効果的に打ち出さうとするパ-シュパタ的シヴァ教徒の叙述の工夫を見るべきである。そしておそらくはク-ルマ化身についての叙述がなされるとき、いくつかのヴィシュヌ教的要素が混入したと考へられるのである。本年度の考察によって、ク-ルマプラ-ナがシヴァ教徒の作であり、ヴィシュヌ教的部分は本来的なものでないことがあらためて確認され、ハズラの所説の問題性が一層明らかとなったといへるであらう。また前年度までは、ク-ルマプラ-ナの前編と後編とを一応切り離して考察したが、両編はむしろ一まとまりのものと見なした方が良いこともおぼろげながらではあるが判明した。
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