研究課題/領域番号 |
63510017
|
研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
坂輪 宣敬 立正大学, 仏教学部, 教授 (70062825)
|
研究分担者 |
伊藤 瑞叡 立正大学, 仏教学部, 教授 (10139496)
三友 健容 立正大学, 仏教学部, 教授 (50062865)
久留宮 圓秀 立正大学, 仏教学部, 教授 (80062842)
佐々木 孝憲 立正大学, 仏教学部, 教授 (00062787)
|
キーワード | 敦煌莫高窟 / 敦煌遺書 / 十巻本法華経 / 正法華経 / 妙法蓮華経 / 長安宮延写経 / Dharmaraksa |
研究概要 |
敦煌莫高窟の壁画、出土文書は、発見以来多くの学問領域から注目され研究が為されてきたが、なお未解決の問題も多く残っている。本研究は対象を法華経にしぼり、壁画、彫刻、出土古写本類を素材に法華経鑽仰の様子の一端を解明した。美術の分野では法華経変を考察対象とし、その規模別分類を試み、大規模な経変画が時代を経て形式面、内容面ともに変化が生じたことを明し、更に描かれる品に注目してその出現頻度を図示した。描かれる頻度によって、製作年代における鑽仰の様相が推定されるが、見宝塔品、普門品の両品は特に盛んに造られた。これらの品に就いては単独に描かれる例も多く、前者は盛唐期に多く、西壁に描かれる例が大部分であった。後者はそれ程の傾向は窮知できなかったが、宋代まで盛んに製作された。古写本では、スタイン本・ペリオ本を総合的に研究し、調巻・奥書に就いて考察した。調巻では現行の七巻本・八巻本の他に十巻本という敦煌独自の遺例があり、その製作にあたり、竺法護訳「正法華経」の影響が看取された。また奥書の検討によって、近親者等の供養のために写経を行った例が極めて多いこと、長安で大規模な書写が行われ、それが多数敦煌に送られていたことなどを指摘した。北京本については、未だ殆ど研究されていなかったが、「妙法蓮華経」を抽出し、写本点数が諸経典中第一であることを明し、また遺例の品数、長さ等を調査し、七巻本、八巻本、十巻本混在の様相を発見した。 最後に、派生的テ-マである敦煌菩薩竺法護の訳経に就いての考察を試み、訳経の年代、訳経地、没年等の未解決の諸問題にスポットをあてた。特に訳経地については、筆受などの訳経補助者の名を手掛りに「須真天子経」「正法華経」等が長安訳出であることを示した。また竺法護の訳経の特徴として校勘の不十分さなどに論及し、その原因として戦乱の時代であったこと、国家の保護がなかったことなどを指摘した。
|