研究課題/領域番号 |
63510020
|
研究種目 |
一般研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
印度哲学
|
研究機関 | 大谷大学短期大学部 |
研究代表者 |
舟橋 尚哉 大谷大学短期大学部, 教授 (70081966)
|
研究分担者 |
小谷 信千代 大谷大学, 短期大学部, 専任講師 (40141494)
吉元 信行 大谷大学, 文学部, 助教授 (50103122)
|
研究期間 (年度) |
1988 – 1989
|
キーワード | 唯識思想の形成 / 唯心 / 唯識 / 阿頼耶識思想 / 有色根 / 瑜伽論 / 大乗阿毘達磨集論 / 大乗莊厳経論 |
研究概要 |
「初期唯識思想の形成」に大きな影響を与えた思想として、般若の空思想とアビダルマの思想とが考えられる。また唯心思想も唯識思想の成立に重要な影響を及ぼしたと思われる。この唯心(citta-matra)の思想は仏教の根本思想の一つであるが、唯識思想がどのような過程で成立したかを唯心から唯識への展開の上に、唯識(vijrapti-matra)という語が説かれた最初はどの経論かをめぐって検討した(第一部第一章)、この過程の中で、新たにわかった知見として、弥勒著といわれる『法法性分別論』はどうやら弥勒の論書ではなく、もっと後期のものであろうということがわかってきた。 「唯識思想の形成」の中で重要な「阿頼耶識思想の成立」も検討した。私もかつて拙著「初期唯識思想の研究」(昭51)の中で論じたが、その後、諸学者も様々な見解を述べられてはいるが、いずれも定説とはなっていない。最近、シュミットハウゼン博士が『瑜伽論』本地分、三摩〓多地に説かれる「有色根に固着する心」に注目され、ここに阿頼耶識の起源を求めておられるが、非常に重要な指摘であると思う。 唯識思想とアビダルマ思想との接点として『大乗阿毘達磨集論』(Abhidharmasamuccaya)も重要である。今回は決択分、法品第二を中心に和訳を試みたものを載せたが、その中に「所縁の差別」や「四種の如実智」や「五種の瑜伽地」など重要な教義が説かれており、唯識思想の成立との関連でも重要である。 また『大乗莊厳経論』(Mahayanasatralamkara)も初期唯識思想の成立を考える場合、重要な論書である。現在、ネパ-ル写本を対照しつつ、テキスト校訂を行なっている。初期唯識思想の形成過程については、まだ未解決な問題もあるが、この研究によって唯識思想の成立過程が少しでも明らかになればと願っている。
|