「かくれ念仏」信仰は、各村各地域ごとの「講」をよって保持されてきたとする歴史的視座がある。「講」を結社として、「かくれ念仏」信仰は藩境を越えて他領の真宗寺に連結し、東西いずれかの本願寺と脈が通じていた。そして、その脈を志納金が流通していたとする。本年度は、「講」に関して調査を行った。 荒ケ田・平原両地域に現存する「かくれ念仏」信仰の「講」は、「仏飯」「焼香」「御茶」「御酒」「餅」を手段としてきた。これらを神前に供え、供養し、その後共同飲食を行う。この儀礼の過程では、行為の節目に経文が黙して唱えられる。 「かくれ念仏」信仰は、荒ケ田・平原両地域においては、それぞれ3と10の「流れ」によって「講」が組まれている。仮に、これらを「ノノさん講」と呼ぶと、「講」の間では「御座」が共有されている。「御座」は、(1)病気治療、不安の立て直し、成功祈願、厄払い、年忌などを目的に「寺元」に信徒が参集して行うもの、(2)年中行事として、月日も祭祀の目的も固定されており、「寺元」の家を「座」にして行うもの、(3)入信儀礼、(4)葬送後7日以内に行われる死者供養のための「御座」に大別される。これら4つの「御座」は共有されているが、それらの「御座」で唱えられる経文には相当度の異なりが厳存する。そして、それらの経文は、「カヤカベ」のそれとも異質である。また、(4)の「御座」では、霊能者Nの神がかりへの強度の社会的信頼が共有されている事実も取り出されている。 「かくれ念仏」信仰は、「御座」を共有する「講」以外にも、種々の「講」を保持してきている。それらの中には、「長袖しろう神講」のように「シント」だけで保持されてきたものと、「観音講」のように「ブッド」とともに「講」を開き、参加する形で保持されているものもある。
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