本研究では、文章に対する“理解"、“記憶"、“生成"の過程をすべて含むと考えられる「文章の要約生成過程」に注目し、その過程の心理学的な解明とモデル化を試みることを目的とした。具体的には、文章読解時に心内に構築される意味の心的表象はどのようなものであるのか、そしてそれはどのような処理を経て構築されるのか、また、構築された意味の心的表象はその後どのように変化するのか、あるいはまた、要約生成時にはどのように利用され操作されるのか、などの問題を心理学的に解明し、文章の理解、記憶、要約に伴う認知過程全体のモデル化を目指そうとするものであった。 本年度は昨年度の成果をふまえ、下記の作業を行った。 1.文章の要旨決定過程のモデル化:物語文章中のどのような部分あるいは意味内容が“要点"となるのか、その要旨決定の法則性を、従来の成果である“意味表象構造のモデル"を利用しながら整理した。なお、その作業のための基礎作業として、物語文章に対する“記憶再生"実験や“重要性評定"実験を行った。 2.要約文章の生成過程のモデル化:原文章に対してある字数制約内で要約を生成することを求められた際の認知過程(要約文章生成過程)を、従来の成果を利用しつつ性格づけした。具体的には、物語文章の要約を求められた際に、人は、原文章の表現をどのような部分でどの程度、残したり、削除したり、抽象化したりするのか、その一般的法則性の定式化を実験デ-タをもとに試みた。
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