本研究の研究期間は2年間であるが、まず第1年目の本年度においては、交付申請書に記載した以下の実験を実施することにより、幼若時に片眼を摘出した場合にシロネズミの非交叉性情報系に出現する機能増大の持つ意味を、明暗回避弁別行動を指標として検討した。 1.明暗弁別行動の再学習に及ぼす残存眼と反対側の視覚野破壊の効果 2.明暗弁別行動の形成に及ぼす残存眼と反対側の視覚野破壊の効果 3.明暗弁別行動の再学習に及ぼす両側性視覚野破壊の効果 4.明暗弁別行動の形成に及ぼす両側性視覚野破壊の効果 以上の4実験におけるそれぞれの学習成績を、出生直後に片眼を摘出したシロネズミ(OEB)と成長後に片眼を摘出したシロネズミ(OET)について比較したところ、両群の明暗回避弁別行動はともにかなり速く成立し、その学習成績には、どの事態においても片眼摘出時期の相違による差が認められなかった。このことから、明暗弁別行動を指標とした場合には、白黒弁別行動の場合とは異なり、幼若時の片眼摘出により非交叉性情報系に出現する機能的増大は、行動面において補償機能をもつものとしては反映されないことが明らかにされた。 本年度における以上の研究成果から、次のような2つの問題が、次年度において検討すべき課題として残された。 1.残存眼からの交叉性情報を遮断した状態では、残存眼と同側の皮質下部位における機能的増大が、明暗弁別行動において補償機能をもつものとして反映されるか否か。2.シロネズミではなく、Hooded Ratでは、幼若時の片眼摘出により非交叉性情報系に出現する機能的増大が、パターン弁別行動において補償機能をもつものとして反映されるか否か。
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