大学1年生男女大学生を被験者として、互いに面識のない同性対各12対を設定し、対面して12分間の会話を行なった。話題は互いに一致して明確な態度を持っている項目を対毎に選択した。対構成に際しては、被験者の不安水準を考慮して、落差群、一致群を半数ずつ設定した。2人の被験者の一方には、自分の態度とは異なる立場で発言する旨を伝え、同意を求めてから(この被験者が欺瞞者)、会話実験に入った。なお、会話の前後には互いの印象を問うパーソナリティ認知、対人魅力評定を求めた。ビデオ装置とマイクシステムを用いて、会話場面の映像的記録と発言の録音を行なった。コミュニケーション行動の指標:主に、個人レベルの指標を抽出して、時系列的に0次の状態を中心とした発言、そして視線パターン、自分の身体接触(顔や頭、手や腕、その他の部位に分類)を用いて、時間的な側面の分析を行なった。発言については、アナログ・デジタルコンバータを介して自動的に、他については、観察者の行動観察結果をデジタル化して、その状態のカテゴライズをパソコンを介して行なった。得られた主な結果は以下の通である。1.欺瞞者と非欺瞞者のコミュニケーション特徴を比較すると、欺瞞者の発言が長く、その関係は女性でより顕著である。また、欺瞞者では発言の中断時間も長い。視線行動については、両者間に明らかな差はない。個体の不安要因を考慮すると、視線時間は落差群よりも一致群で欺瞞者>非欺瞞者の関係を呈している。身体(手・腕)接触時間については、欺瞞者の方が長い。2.会話後の認知評定を比較すると、女性では欺瞞者は饒舌で、ユーモアがあり、好感を持てると捉えられているが、男性では肯定的には認知されておらず男女差がある。なお、さらに、各種チャネル間の関係を継続して分析しており、コミュニケーション構造を明らかにするとともに、欺瞞無導入条件の特徴との比較を行なっている。
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