老齢動物の学習・記憶機能の特徴を明らかにするために、本年度は老齢ラットを用いて以下の4つの課題での学習成績を、若齢ラットラットのそれと比較した。 1.遅延見本合わせ学習 廊下式のT型迷路における遅延見本合わせ学習を、エサを報酬として老齢ラット(21か月齢)と若齢ラット(6か月齢)に訓練した。その結果、遅延見本合わせ学習の習得にも、また学習後の遅延テストでの成績にも、老齢と若齢の間に差は認められなかった。 2.放射状迷路における場所学習 8本のアームを持つ放射状迷路の4本のアームのみに報酬(エサ)を置く場所学習を老齢ラット(27ヶ月齢)と若齢ラット(12か月齢)に訓練した。その結果、老齢ラットは若齢ラットに比べて、明らかに学習成績が劣っているということがわかった。 3.位置弁別学習 グライス箱を用いて、位置(左右)弁別学習を電撃動因下で訓練した。その結果、老齢ラット(18-21か月齢)は若齢ラット(3か月齢)と同じようにこの課題を習得し、両者の間に差は認められなかった。 4.明暗弁別学習 グライス箱を用いて、明暗(白黒)弁別学習を電撃動因下で訓練した。その結果、老齢ラット(18-21か月齢)は若齢ラット(3か月齢)に比べて、この課題の習得が著しく劣っていた。 さらに以上の実験において、老齢ラットでは若齢ラットに比べて学習成績の個体差が大きく、老齢になるにしたがって学習・記憶機能が衰えていく個体が出現することがうかがえた。
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