老齢動物の学習・記憶機能の特徴を明らかにするために、老齢ラットを用いて以下の6つの課題での学習成績を、若齢ラットと比較した。 1.位置弁別学習 グライス型弁別箱を用いて、位置(左右)弁別学習を訓練した。その結果、老齢ラットは若齢ラットと同様の成績でこの課題を習得した。 2.明暗弁別学習 グライス型弁別箱を用いて、明暗(白黒)弁別学習を訓練した。その結果、老齢ラットは若齢ラットに比べて、この課題の習得が著しく劣っていた。老齢ラットでは成績に個体差を大きいことも特徴的であった。 3.放射状迷路における場所学習 8本のア-ムを持つ放射状迷路の4本のア-ムのみに報酬(エサ)を置く場所学習の訓練を行ったところ、老齢ラットは若齢ラットに比べて明らかに学習成績が劣っていた。そしてこの学習障害は作業記憶ではなく参照記憶の障害によるものであった。 4.廊下式T型迷路における遅延見本合わせ学習 老齢ラットはこの課題の習得にも、また遅延テストの成績にも障害を示さなかった。 5.廊下式および高架式Y型迷路における遅延見本合わせ学習 T型迷路に比べて自己受容感覚手がかりより少ないY型迷路を用いたところ、老齢ラットは遅延見本合わせ学習の習得に障害を示した。また老齢ラットのこの障害には個体差が大きかった。さらに遅延テストでも、老齢ラットの成績は悪く、作業記憶の障害も認められた。以上の結果から、老齢ラットは弁別手がかりの少ない学習課題において、学習障害や記憶障害を示すと結論される。しかし、重篤な障害を示す個体とほとんど障害を示さない個体がおり、個体差が大きかった。
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