本研究では、クローズドコロニー系のマウスSlc:ICRを用い、胎児期に羊水中へ注射された味覚/嗅覚刺激を胎児が記憶し、出生後その記憶に基づいて自分の母親へ接近するか否かを調べ、胎児期の記憶の重要性を検討することを目的とした。 実験のために、(1)生理食塩水を羊膜内へ注射される群(生食群)、(2)バニラ刺激を羊膜内へ注射される群(バニラ群)、(3)リンゴジュースを羊膜内へ注射される群(リンゴ群)(4)レモンジュースを羊膜内へ注射される群(レモン群)、(5)何も注射しない群(無処置群)を構成した。無処置群には、下位群として(i)テスト時にバニラ刺激を用いる群(NV群)、(ii)テスト時に生理食塩水を刺激として用いる群(NS群)、(iii)テスト時にリンゴジュースを刺激として用いる群(NA群)、(iv)テスト時にレモンジュースを刺激として用いる群(NL群)、(v)テスト時に何の刺激も用いない群(NN群)の5群を構成した。(1)〜(4)群は、妊娠16日でそれぞれの刺激を投与され、出生後2日目に各刺激に対する記憶テストを受けた。(i)〜(iv)群は出生後2日目に各刺激に対する記憶テストを受け、(v)群は出生後2日目に無刺激状態でテストを受けた。 実験は現在進行中であるが、これまでのところ、胎児は嫌悪刺激であるバニラを最も良く記憶し、appetitiveな刺激であるリンゴジュースを次に良く記憶しているという傾向が認められる。
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