本研究では、クロ-ズドコロニ-系のマウスSlc:ICRを用い、胎児期に羊水中へ注入された味覚/嗅覚刺激を胎児が記憶し、出生後その記憶に基づいて自分の母親へ接近するか否かを調べ、胎児期の記憶の重要性を検討することを目的とした。 実験群としては、VV群(羊水中へバニラを注入し、出生後それへの選択テストを行う群)、ApAp群(羊水中へリンゴジュ-スを注入し、出生後それへの選択テスト行う群)、SS群(羊水中へ生理食塩水を注入し、出生後それへの選択テストを行う群)の3群を構成し、そのコントロ-ルとしてVV群(胎児期は無処置で、出生後バニラへの選択テストを行う群)、NAp群(胎児期は無処置で、出生後リンゴジュ-スへの選択テストを行う群)、NS群(胎児期は無処置で、出生後生理食塩水への選択テストを行う群)の3群を構成した。 実験群には、妊娠16日(出生3日前)に味覚/嗅覚刺激の注入を行った。また、実験群とコントロ-ル群に対して、出生後21日齢で刺激への選択テスト(記憶テスト)を行った。 テストの結果、NV群はバニラを避けるのに対し、VV群はそれを避けなかった。また、リンゴジュ-スと生理食塩水については、実験群とコントロ-ル群の差異は認められなかった。 これらのことから、出生後2日齢の新生児は、嫌悪刺激であるバニラを最もよく記憶していることが明らかとなった。今後は、妊娠何日の胎児がどれほど記憶と学習の能力を持っているかについての検討が必要である。
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