1.収集した文献などの資料について検討し、従来からの取組みの特徴と今後検討すべき課題が明らかになった。(1)最近の登校拒否には従来とは異なるタイプの者がいることが指摘されたが、それらのタイプの分類が思いつきであり、登校拒否と判定する規準があいまいであるので、さらに組織的な検討が必要である。(2)わが国では、精神分析的ないし精神医学的な発想が中心となっており、治療の目標も、子ども自身の不安の除去や人格変容が主眼となっている。そのため「登校刺激」を与えないように配慮し、長い時間をかけての治療が必要とされ、早急な再登校の指導が副次的に考えられる傾向がある。その結果、登校拒否が発生した直後の適切な対応が遅れ、早期に復校させるチャンスを逃すことが多い。文献に紹介された事例のほとんどが、超期間の登校拒否ののちにやっと組織的な治療を受け、その治療(再登校)にその後の長い期間を要している。早期の復校のためのストラテジィ-の開発が望まれる。(3)不安の除去に関連して、母子関係だけでなく、父親を含む家族全体への治療的取組みが重視されるようになるなど、家庭や家族に関する種々の要因が注目されるようになったが、学校に関する要因についての検討が遅れ気味である。 2.研究者、学校関係者及び親たちにも、従来の発想や方法とは異なる行動的取組みへの関心を高めるために、日本行動分析学会第7回大会(1989、6、3-4)において「登校拒否の行動分析的アプロ-チ」のテ-マで公開シンポジウムを企画し司会した。今後さらに、教師と親の両者に対して、子どもが早期に再登校し、学校環境(教師、友だち、学業面)にも適応するのを援助できるように指導するプログラムが開発されなければならない。
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