本研究では、ストル-プ干渉(SI)、逆ストル-プ(RI)について画像的コ-ド化と言語的コ-ド化の相互作用という視点からアプロ-チし、その成立機序について解明することを試みた。 まず、マッチング法を用いてストル-プ・逆ストル-プ干渉の集団版テストを作成した。テストは二つのコントロ-ル課題、ストル-プ課題、逆ストル-プ課題から構成されていた。次の4つの実験によって本テストの妥当性、信頼性を調べた。実験1では、マッチング法を用いた本テストでも伝統的な口頭反応と同様に、有意なストル-プ干渉が見出された。実験2、3、4によって両干渉課題において課題の実施順序による効果ならびに練習効果が見出されないことが明らかになった。また、高い再テスト信頼性(r=.695〜.824)が認められた。次に、両干渉の発達的変化を調べた。集団用ストル-プ・逆ストル-プテストを用いて、7歳から96歳の被験者を対象に両干渉の測定を行なった。作業遂行量は20代をピ-クとした山形をしていたが、両干渉率は対照的な変化を見せた。SIが逆U字型であるのに対して、RIは単調減少型であった。このことは、両干渉の生起に異なる機序が底在することを示している。さらに、選択的注意に障害があるとされる精神分裂病患者を被験者として、集団用ストル-プ・逆ストル-プテストを用いて、遂行作業量ならびに両干渉率を測定し、さらに精神科医による日常の行動観察、及び看護婦の介護必要度の評定結果と比較した。この結果、精神分裂病患者と健常者との比較では、作業量ならびに両干渉率において健常者が優れているということ、さらに逆ストル-プ干渉率と精神分裂病患者の行動傾向、特に衝動の統制度との間に密接な関係があることが明らかになった。以上の結果を説明するために、ストル-プ・逆ストル-プ干渉の生起機序に関する情報処理モデルが提案された。
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