人間の高次の概念の基本的なものに、空間や時間に関する概念がある。これらの概念は、毎日の学校での教科学習を通じて獲得されるばかりではなく、日常的な動作・運動などの経験を媒介にして発達する。したがって、日常的動作を著しく阻害された運動障害児の概念の発達を考える場合、学校での教科学習の問題点を探ることに加えて、日常的な動作経験との関係で考察することがきわめて重要である。そこで本研究では、先ず成人における概念構造に関する基礎的な知見を得たのちに、健常児における空間・時間概念の発達を明らかにし、それらの知見に基づいて運動障害児の概念発達および教科学習の問題を明らかにし、教育現場への応用を試みることを目的とする。本年度は、以下の3つの点を中心にして研究を進めた。1.まず、予備調査として、成人における概念構造をファジィ論理によるアプローチによって検討し、ファジィ論理によるアプローチの有効性を実証した。次に、健常児における概念の発達を定量的にとらえるため、現在、小学生と中学生のデータを得て、解析中である。2.児童・生徒が学校での教科学習に対してどのような問題や意識をもっているかの調査を行なった。結果は現在解析中である。3.筑波大学附属桐が丘養護学校に関係する児童・生徒が通っている全国の小中学校の教師への質問紙調査を行ない、運動機能障害児が学校での教科学習に対してもつ問題点を検討した。現在、最初の質問紙はほぼ回収され、分析の最中である。今後は、以上3点の実験および調査結果に基づき、運動障害児自身の意識調査や実験を行ない、総合的な考察を進めていく予定である。
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