ラットを対象にホルマリン誘発性後肢屈曲反応を指標にした新しいタイプの持続(慢性)痛測定法を開発、いくつかのテストによりその有効性を確認した。この方法は、(1)痛み反応を具体的な記録として測定するため、判定に際し、客観性および確実性が保たれる。(2)単一反応を指標とするため、同一の痛み成分の継時的変化が観察される。(3)ホルマリン誘発性屈曲反応は麻薬性鎮痛薬に高い感受性を示し、しかもホルマリンによる痛み反応の他の指標にくらべ、より長時間、一定レベルの反応量が得られるため鎮痛効果試験法として有用である。テストまでの馴化訓練に時間を要すること、再現性に関して約10%のラットに低反応が出現し、しかもその原因が不明であることなどの問題点があるが、馴化訓練に関しては測定時間の短縮により、訓練日数も短縮することが可能である。実際に測定時間を高頻度の反応が出現する60分間とした場合馴化訓練は4〜6日ですむ。 ラット、マウスを対象にストレスのタイプによってSIA(Stress Induced Analgesia)にどのような相違があらわれるかを検討した。用いたストレス手続きは冷水浴、拘束、電撃等であり、疼痛テストとしてはtail-flick test、hot plate testであった。また、拘束ストレスにはさらに餌、水の剥奪を加え、SIAが生体に備った具体的な個体維持機能とどう関係するか、また攻撃等の情動反応の操作(薬物による)によってどのように変化するかを検討した。結果は明瞭ではないが、tail-flick testによる結果とhot plate testによる結果に大きな差が見られており、疼痛テストの重要性が示唆された。 ヒトにおけるSIAも検討され、いわゆるランニング・ハイがSIAのメカニズムによるか否かDolorimeterとCold pressorによって測定した。その結果、ランニングの前後で確かに痛みの閾値、耐性に上昇変化を見た。
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