障害箱法と動因弁別学習法とを用いて、ラットの飢餓と渇の動因の相対強度を測定した石井の安定した相反する結果から、動因間の交互作用の可能性が考えられ、それを検討する研究がなされた。 ラットの動因間の交互作用を直接的に測定するために、動因強動の弁別学習法を用いた。まず、2バー・スキナー箱で、飢餓、渇、電気ショック、または恐怖のいずれかの強弱を弁別させる。その後に、弁別動因とは別の動因を共存させて、中間強度の弁別動因が弱められるか強められるかをみる。これで動因間の交互作用の検討を試みた。データの整理がまだ十分ではないが、主な成果として、電気ショックの強弱の弁別は比較的容易にできたこと、および、中間強度の電気ショックに別の動因を共存させると、概して電気ショックは抑制されるような交互作用がみられたことである。他の動因の強度弁別は十分とはいえず、さらに訓練または検討が必要である。本研究の主な成果として、安定した神経パルス測定法の開発もあげられる。補助金で購入した、マイクロコンピュータ、ADX-98E、ウェーブマスター、拡張メモリなどを用いて作り上げた神経パルス波形処理システムは、データ・レコーダに記録された測定実験中の任意の数10秒間の神経パルス波形部分を高速に切り出して、目の当りに静止的に表示し、比較検討や波形処理ができる。このシステムは、今後の動因の交互作用の神経活動の測定・分析に大いに寄与する。もう1つの主な成果は、補助金で購入したニューロン網のシミュレーション・ソフトである。これにより、コンピュータ上で、神経素子と結合とのいくつかの基本機構を組み合わせてニューロン網を組み立て、その動作を検討できる。今後、実験で測定された結果をもとに動因の交互作用の神経機構を整理・検討するのに大いに役立つ。これらの成果をふまえて次年度の研究の進展が期待される。
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