前年度に引き続き、子どもの13カ月齢時点と18カ月齢時点の行動分析を行なった。分析は主に子どもの「人見知り」現象と、見知らぬ人との社会的交流のあり方を中心に行なわれ、両年齢における発達的変化が比較された。13カ月、18カ月とも、Ainsworthのstranae situation手続きに従がって、観察が行なわれたが、日本の子どもの行動特徴として、このような観察場面における感情的混乱が非常に強い事が明らかとなった。 子どものこのような反応傾向について、西ドイツのGrossmann夫婦は、日本の母親は子どもが遭遇する新奇事態に対する適応促進を怠っている事が第1原因であり、また、日本の研究者や母親が手続きを厳密に守ろうとするあまり、子どもの不安反応を放置しているという批判を行なった。しかし、われわれの観察ではほとんどの母親が第1エピソ-ドで何らかの介入を行なっており、また60%近くの母親が子どもとの身体的接触や玩具のやり取りを通じて、新奇事態への適応を促進させていた。 そこでわれわれは、母親を4つの感情表出をタイプに分類し、子どもの感情的混乱と年齢の移行について、互いの関係を調べてみた。その結果、母親が子どもの前で否定的な感情を表出し、肯定的な感情を抑制する群の子どものみが、13カ月齢と18カ月齢の間で、見知らぬんに対する反応傾向に一貫性がない事、両感情とも表出する群、抑制する群、否定感情を抑制し肯定感情を表出する群では、こどもの18カ月齢で少なくとも、見知らぬ人と一緒の場面の感情的混乱が抑制され、対社会交流両が増加することなどがあきらかになった。しかし一方、観察室に一人きりで残される事態において、ほとんどの子どもが13カ月齢時点よりも18カ月齢時点で介護者不在による感情的混乱を増加させ、見知らぬ人や母親の即刻の介入を要することが明らかになった。このことは、日本の母親による、日常的に過剰な介入という養育態度を示唆するものである。
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