1.ラットにおける摂水行動の条件性抑制は、その直前に与えられる嫌悪刺激(電撃1)によって脱抑制されること、およびその脱抑制量は、電撃1の強度がある強度まではそれの正の関数であること、などが昨年度の実験によって示され、これらの相反過程理論からの予想とおおむね一致するものであった。 2.本年度は、昨年度と基本的には同じ手法を用いて、昨年の事実を再確認するとともに、この脱抑制が電撃1のような一次性の嫌悪刺激のみでなく、電撃と対にされることによって2次性の嫌悪刺激となった刺激によっても生ずるかどうか、また脱抑制量は2次性嫌悪刺激の嫌悪度の正の関数であるかどうかを確かめ、それによって相反過程理論の妥当性を確認することを目的とした実験が実施された。 3.まず50匹のラットに摂水行動をベ-スラインとした条件性抑制を分離型試行の方法を用いて形成し、その後それらを5群に分けた。次にすべての群に対して条件性抑制の試行前(以後単に試行前と呼ぶ)に信号1+電撃1を与えてそれによる脱抑制を見たが、各群は電撃1の強度において異なった。試行によって試行前に(a)信号1+電撃1を与える場合、(b)信号1のみを与える場合、(c)何も与えない場合をつくった。 4.上の記号で結果を表わすと、脱抑制の大きさにおいてa、b、cの順であり、これは相反過程理論からの予測と一致した。特にbにおいても有意な脱抑制が見られたことは、脱抑制が2次性の嫌悪刺激の残効としても起こり得ることを示している。しかし脱抑制量がa、b両場合において、電撃1の強度の正の関数であろうという予測は、強い電撃のもつ摂水ベ-スライン全体を抑制する効果のために複雑なものとなり、特殊な比率に結果を変換することによってのみ相反過程理論に矛盾しない結果となり、この理論の修正の必要が唱られた。
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