研究概要 |
1.情動に関する相反過程理論(Solomon & Corbit,1974)の妥当性を検討するために実験的、理論的研究が行われた。実験はラットの摂水行動をベ-スラインとして条件性抑制場面で実施され、条件性抑制の直前に与えられる嫌悪刺激が条件性抑制を緩和する効果(脱抑制効果)をもつであろうとする理論的予測を確かめる形で行われた。 2.具体的には相反過程理論が予想するように、(1)条件性抑制の前に与えられる嫌悪刺激によって脱抑制が起こるであろう、(2)その脱抑制は嫌悪刺激が1次性のものでも2次性のものでも生ずるであろう、(3)その脱抑制の大きさは嫌悪刺激の嫌悪度の正の関数であろう、(4)その脱抑制は、嫌悪刺激が条件性抑制を引き起こす刺激に接近して与えられるほど顕著であろう、などが2つの実験によって確かめられた。 3.実験の結果、上の4つの仮説の内の1、4は無条件に支持され、2も肯定されたが2次性の嫌悪刺激による脱抑制量は、1次性のそれによるものと比べると予想以上に小さなものであった。仮説3を検証するために強い嫌悪刺激を与えたところ、それによって摂水のベ-スライン全体が抑制されてしまい、そのことと条件性抑制中の脱抑制とが複雑に絡み合い、それによって難しい問題が提起された。しかし結果を脱抑制率という特殊な比率に変換することによって相反過程理論と矛盾しない結果となった。しかしこのような事実は、これまでの相反過程理論では考えられていなかった新たな側面を付加することとなり、今後の継続的検討が必要と考えられた。
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