研究概要 |
労働関連ストレス評価法として開発した「蓄積的疲労徴候インデックス」(Cumulative Fatigue Symptoms Index:CFSI)について,尺度の信頼性と妥当性を検証した。インデックスCFSIは,日常の労働生活の中で生ずる心身の違和感,疲労感等に関する81の質問からなっており,対象者の最近の症状徴候を問うものである。調査法はSelbーreport方式による。職種を考えて得られた資料をもとに,主成分分析を通して,既に8特性(因子)を抽出している。すなわち,不安徴候,抑うつ状態,一般的疲労感,イライラの状態,労働意欲の低下,気力減退,慢性疲労徴候,身体不調の各カテゴリ-である。これらは,応答の内的関連性を示すものであり,統計的に尺度の安当性を証するものでもある。 本研究では,主として信頼性の有無を確めた。ただし,ここでいう信頼性とは,同一対象者に,一定の間隔を置いて,2回CFSIを実施した場合,その応答の動揺の度合を意味している。検証資料は,職務分析を行った実績のある総合病院の病棟看護婦を対象として得られた(昭和63年度)。対象者数690。このうち,2回のテストで同一者だったものは455例。テストのインタ-バルは4日間から11日間に分布。この資料について,TestーRetest間の相関分析を行った(平成元年度)。インタ-バル11日の例で,「気力減退」と「身体不調」が5%の有意水準であったが,他のインタ-バルでは,8特性すべて0.01以下の水準で有意な相関であることが証明された。平成2年度では,他職場(病院ほか)での資料もふまえて,レ-ダチャ-ト図に示される「CFSI応答パタ-ン」の判定から,職務の状況などの「外的規準」による妥当性・信頼性の検証も試みた。この「パタ-ン」分析でも信頼性を証することができた。 本研究(3年間)の成果は,論文としてまとめ,「労働科学」に投稿した。
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