1970年代以降の客観的事態の変化のなかで、農民に労働評価の意識が醸成され、個の意識が顕在的になりつつある。そのような変化のなかでの農民の学習の変貌をとらえることが本研究の課題であった。 本年度は、福島県相馬郡小高町福浦地区の井田川及び女場部落を対象として調査研究を行った。以下に本年度の研究が明らかにした点について述べる。 1.福浦地区の農民教育は、組織的な総合性(部落と生産部会等を土台とし、農業農協問題研究集会にいたる)と生産と生活との関係で構造性(水稲から畜産・椎茸等の経営に、専業から兼業の課題に、そして生産から生活にいたる)という二つの特徴をもって出発した。 2.福浦農協による地区農業の展望は小農複合経営にもとづく地域農業の組織的な発展にあったが、同時にそれは地区の農民教育の目標でもあった。しかも、複合化による小経営の発展は、教育の主体的基盤の存立の鍵でもあった。70年代以上に厳しい農業環境のもとで、教育の志向の実現や主体的基盤づくりは、その後容易に達成されなかった。 3.福浦農協が策定した「地域農業振興計画」を実現するにふさわしい主体的な営農と農政の担い手としての能力の発達が課題とされるにいたっている。 複合化のすすめられる課程では、農民の獲得する認識の水準が決定的に重要になっているが、営農の認識、及び農政認識の発達に教育がその推進力としてかかわっているのである。
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