今日、個別家族では対処しきれない生活問題が国民各階層に著しく進行している。こうした問題の社会化が進行・拡大するという状況下で、住民サイドに立った社会福祉実現のための諸施策の具体化と社会的・組織的実践の提起が課題となってくる。この課題遂行にあたって住民の側より、脆弱化している生活基準としての地域社会を家族福祉と連結させたところで位置づけることが要請されるようになっている。そこでまず、地域社会と連結させた家族福祉の展開が要請される社会的背景、必然性を家族サイド、政策サイドそれぞれ分けて検討し、その本質における差異に明らかにするために資料収集および文献検索を行った。 さらに、地域社会における社会変動およびそれにともなう生活上の諸問題を生活主体の側からとらえ、社会福祉の体系、運営、援助方法等について家族問題との関連で検討をすすめるために、上記資料の分析および実態調査に従事した。具体的には、在宅福祉サービスと福祉供給システムに関する資料や福祉のまちづくりに関する各自治体や社会福祉協議会および民間団体の資料ならびに報告を求め、実態を把握した。 さらにまた、茨城県内の近接市内の高齢者を対象に福祉ニードを把握するための実態調査を試みて、一応の視角を得た。 現在各地域で高齢者の在宅福祉サービスを推進するために、いろいろな推進体制や福祉供給システムが模索されている。しかし在宅福祉サービスの多様な展開がみられる大都市においても、各種の制度が乱立していて、地域社会全体としては、いまだトータールシステムの整備がなされていない現状が見受けられた。したがって、こうした推進体制の確立と同時に、対象者の生活全体を地域で支え、ともに考えていくために、在宅福祉サービスの統合化とネットワーク化の必要が痛感され、これが今後の検討課題であることを認識した。
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