わが国都市の老年人口比率を1985年国調結果でみると、7%未満の若年都市は、そのほとんど全てが大都市周辺に分布しているのに対し、14%以上の老年都市は大都市から隔たった地方に分布し、しかも小規模都市が多い。とくに老年人口比率16%以上の場合、28都市のうち4〜6万人台が3市、3万人台5市のほか他の20都市はすべて1〜2万人台の零細都市である。高齢化の進んだ都市は若年人口の流出によって現出したものと考えられる。過疎化都市現象とよぶことができよう。過疎化にともなう人口の高齢化は他方で大都市中心地域でもみられる。 塩釜市においては全市平均老年人口比率9.4%で、高い方ではないが、市域内の島部の漁村集落では16.6%と高率を示す。市民意識調査は全市サンプルとは別に漁村集落をとって面接調査を実施した。 市街地の近隣関係は以前より希薄化したとの評価がみられ、家族構成の変化と合わせ、地方都市における高齢者の生活条件は不安定を増している。最も大きな不安要素は将来の健康とそれに対応した医療体制であった。漁村集落においても同様で、個人の努力を越えた地域の組織的対応の必要性が高い。 塩釜市行政当局では、1989年7月、「長寿社会対策検討委員会」を発足させ、官民合同の論議を開始した。この委員会は、民生児童委員連絡協議会、社会福祉協議会、医師会、市立病院、保健所、老人クラブ連合会、商工会議所青年部などの代表からなり、幅広い施策を検討しはじめたところである。この委員会の検討資料として、本研究成果の一部が活用されている。
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