本研の4つの目的をあげ、それに対応する成果を述べる。1.直系家族の周期・Life-cycle crisisと土地所有の関係を、岩手県のdataにより解明する事。内外の要因でそのcycleが攪乱されることが予期出来る時には、上層世帯では末男子1人を世帯に残して嫁を取り、長男unitとcompound(joint)familyを形成した。中・下層世帯はしかし以上のstrategyは取れず、夫婦1組に移行した後の不慮の危機に対して極めて脆弱だった。 2.近世農民の出生〜死亡までの人生行路(life-course)に、ある共通のpatternが見出せるかを岩手県のdataで試みる事。人生を画すeventsを多く採用する程(世帯人数が多い直系家族では)、彼のキャリアは実に多様となる。ライフコ-ス研究法は、本来近・現代の核家族の成員を念頭に置いており、直ちに歴史資料にfitさせ得ない事が分かった。しかし、eventsの前後を極ル-ズに括って処理すれば、ある程度の類型抽出は可能である。宗門帳など時系列dataの持つ長所を十分に生かす工夫をしたい。3.領主の人口=労働力・家族政策を、仙台藩を事例に検討する事。以上の政策は土地=農業制度と一体的に展開された。小農制度が定着し、また自然災害による人口減少・農民疲弊が明確化する18世紀中盤〜19世紀にかけて、藩は弛緩していた人口調査の徹底、持高及び次三男の結婚制限の解除、乳児養育補助の開始等を行った。しかし、それらの施策は極めて消極的かつ対症療法的のものだった。 4.都市人口の構成、移動、職業そして家族・世帯の構造を、奈良町内の宗門帳から明らかにする事。2つの町へ流入し流出して行く人口の年齢構成はほぼ同一であり、都市内移動を中心とする人々の移動は頻繁で(「通過町内」)、その方向には、都市の機能分布(商工、サ-ビス、金融等)に対応したpatternが観察された。一部の上層商工業者を除き家族構成は核又は欠損typeで、そのresidential stabilityは極めて悪かった。
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