本研究は、中央レベルの政治過程に比べ従来軽視されがちであったところの地方政治過程のダイナミックスを明らかにすることを狙いとする。その手掛りとして、本研究は、通常では不可視の地方政治過程が一挙に顕著化するところの地域社会紛争を素材としてケ-ス・スタディをおこなうことにし、具体的には、京都市の古都保存協力税問題を選んだ。 当初の研究実施計画において想定しておいた4つの調査・研究項目( 1.紛争当事者へのインタビュ-、2.市民を対象とした質問紙調査結果の分析、3.地域比較研究、4.文献・理論研究)は、昨年度と同様に、それぞれ順調に実施することができた。 1.インタビュ-においては、古都税問題の当事者から新聞報道などでは知りえない紛争の詳細な過程について、昨年度と同様に聴取した。 2.質問紙調査の結果分析については、現時点の中間総括的論稿を公表した。 3.比較研究においては、古都税と同様の税条例を施行しながらも紛争にまでは到らなかった日光、平泉、松島の各地方自治体のうちの平泉を昨年度に続き京都の場合と比較研究し、昨年度の研究によってえられた地域社会紛争一般の研究のためのラフな枠組の洗練に努めた。 4.文献・理論研究については、京都市当局の古都税問題への対処の仕方を中央-地方関係論の枠組のなかでどう分析しうるのかについて分析を進め、そこで得られた知見を背景として、現代日本の中央-地方関係についての論稿を作成した。また、オ-ル与党体成論、首長論についてもさまざまな文献の研究を進め、その分析レベルの深化に努めた。
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