今年度の研究課題として、宗教と政治との関係一般についての研究をその一つとして取り上げた。日本ではこの宗教と政治の関係についての重要な問題と言えば、天皇制や神道と政治の関係がすぐに取り上げられる。これに対し、本研究の対象である京都市の古都税問題は、宗教と税制の問題の一つとして位置付けられる。そして、現代の日本では、税制改革のときにマス・メディアを賑わした宗教法人批判キャンペ-ンがそうであったように、この宗教と税制の問題は、なにか天皇制や神道と政治の関係に比べて矮小な問題であるかのような印象をもたれている。しかし、この問題は、ヨ-ロッパの歴史をあるいはまたアメリカの現在を見れば分かるように、宗教と政治の関係の最も重要な問題の一つなのである。今年度は、そのような視点から古都税問題を素材として宗教と税制の問題に取り組むことを通して、日本における宗教と政治との関係一般について研究をおこなった。 また、今年後は、「媒介者論(二つのシステムを媒介する者をめぐっての現象に関する理論)」によってこの古都税問題を総体的に論じるということを課題とした。宗教に携わる者(聖職者)は、聖なる世界と世俗の人々とを媒介する存在であり、政治に携わる者(政治家や首長あるいはまた官僚)は、政治的世界と日常生活者とを媒介(代表)する存在である。現代の日本ではそうした感覚は薄れてしまったが、政治に携わることに聖職的性格が付与されるのは、政治に携わるということが媒介(代表)という機能を果すからである。宗教と政治の関係あるいは対立というのは、まさにそれぞれが媒介者としてもつことになる権威や権力をめぐっての対抗や対立に他ならない。こうした媒介者論の視点からのこの古都税問題へのアプロ-チをおこなった。 また、今年度の課題である研究成果報告書として『古都税問題研究』を発行した。
|