本年度は第1年度にひきつづいて各地の身体障害者療護施設での実施調査の継続と関連資料の分析を行ない、合わせて2年次にわたる調査研究のまとめを行なった。以下研究成果の概要を示す。 1.重度身体障害者施設での介護・被介護の現状と問題点 全国各地の身体障害者療護施設における介護実践は、各施設でそれぞれ業務分析をするなどの努力をしているが、安定的な介護実践方法をもつに至っているところはほとんどない。そこでのいちばんの問題は被介護者である障害者の心理的ケアの未熟さである。これについては介護実践の基本理念が未確立であることに基本的原因があろう。いまひとつの問題は介護技術の未確立である。各施設で自己流で行なっているところが多い。これは介護者養成プロセスの問題でもある。被介護者の立場から現状を評価すると、その生活の質(QOL)が一般市民に比してかなり低く制限的なものに止められている問題がある。また介護過程で必ずしも人間的尊厳を尊重されていない状況が広範囲にみられた。全体を通しての最大の問題である。 2.介護実践研究の方法・視点 本研究から抽出した分析方法は以下のとおりである。1)介護者の実践意識と被介護者との空間的位置 介護者が単に身体上の介護をするのでなく精神的・心理的ケアをすることを意識している程度が介護者・被介護者の空間的位置関係に現われる。報告書ではこの点での具体的分析を行った。2)介護記録 ケ-ス記録の多くは障害者の問題点を挙げるが、むしろ介護・被介護の関係を示す事実と解釈を記録すべきである。この点でも具体的分析を行なった。3)被介護者の意識 介護されている障害者の意見を集約することで介護のあり方の1つの方向が得られた。4)福祉機器 生活行動困難を軽減し自立を促進するのに効果大であった。
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