北九州市門司区の少年犯罪構成の諸要因にかかわる基礎資料の分析を今回の主なる研究目的としたので、北九州市役所、門司区役所、福祉事務所、警察署より提供された資料を検討し、次年度の研究へのステップとした。その研究成果を略記すると〈1〉今までの研究もそうであったが、関係機関に詳細な関係資料の提供をしたが、人権問題にかかわることなどもあり、その資料蒐集が困難で、限られた資料の分析に終った。今後の折衝にて追補したい。〈2〉経済変動と生活保護、並に犯罪との相関が或程度明確化したが、これの要因の究明が今後の課題である。〈3〉門司署より提供された検挙犯罪少年(昭和56〜60年、男=1447人、女=299人)のカードの集計並にこれのマッピングをなし犯罪図(居住地・犯行地別を作製し、問題地区の設定をなし今後の研究のステップとなったことは成果の一つである。〈4〉小倉家裁、児童相談所、少年相談センターからの資料は一応入手出来、諸分析の参考となったが、小中学校の協力は積極的とはいい難く、今後の折衝により実態調査において功あらしめたいと計画している。マッピングの結果よりその特性をみると(1)犯罪少年の凝集する地区は概して多家族で、生保率が高く、かつ職業の不安定度が高いこと。(2)隣接する地区又は市外地域へのいわゆる出張犯行も増加傾向にあること。(3)他区の場合と同じように都市交通の発達は極めて結構なるも他面、その沿線での盗犯、粗暴犯の増加傾向も注目する必要があろう。以上であるが今後の課題としてマッピングによって問題地区として仮設した地域にのぞみ学校、その他の諸機関と連携をとり、あるいは住民の意識調査などをしながら地域的特性と犯罪発生との関係を一層綿密に究明するとともに、また可能ならば、これまで約30年間にわたって研究を続けてきた北九州市内の各区の少年犯罪の現行と、これまでの推移について比較研究をすすめることが出来ればと思う次第である。
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