本年度の研究目標としては、初年度に門司署の資料により作成した犯罪図(居住地・犯行地別)により仮設した問題地区の分析をなすことを主たる研究目的とした。よってそれぞれの問題地域に臨み、人口、家族構成状況、共働き、生活保護状況などの資料収集に当たり、これらの特性の分析を試みたが、何分にも各町内組織区分の複雑さに加え、研究項目の大部分がプライバシ-保持に関連するものが多く、仲々の難行をみたが、幸いにも門司署の積極的な協力により各派出所、駐在所管内の地域的特性の把握が一応できたこと。また問題地区を擁する中学校を対象に生徒の生活実態調査の実施によって問題性の検出をと試みたが、中学校側の諸行事等の関係からして新年度に実施することになったが、各中学校側の生徒指導主事の協力によって各校の概況の聴取ができたことは幸であった。また私どもの研究に関連するが、門司区においては平成元年より門司区青少年相談機関連絡会議が組織され、青少年問題行動が家族の諸変容との相関が濃密であることを公表しているので、この組織とも連けいを密にして最終年度における研究の成果をあげるべく準備中である。 現在までに資料収集によって得た特性をあげると(1)旧来の港町としての諸環境上の衰退の影響、またマイノリティ-地域の持つ問題性、そして旧来の農漁村的特性をやどす地域への新入居者の移住などをともなう地域の問題の発生と少年の逸脱行動との関連性の有無、(2)旧来の繁華街並に新興住宅地域に発生する諸問題の検出、(3)特に新興住宅街の造成とその地域に設立されたス-パ-における万引等の多発化、(4)共働きの家庭の少年にみる逸脱化をめぐる問題性、(5)学外学習塾を通して他校生徒間の接触がなされ、またゲ-ムセンタ-が怠学者少年のたまり場化していること、(6)都市の活性化策としての遊興施設の周辺が逸脱行動少年のたまり場化していることなどである。
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