文部省科研費(一般研究(c)の3ケ年継続研究)の交付をうけ北九州市門司区の地域変容と少年犯罪傾向について社会学心理学福祉学の専門の分野に立って研究をすすめてきた。初年度は基礎的資料の収集に、2〜3年度では基礎的資料を基として得た各々の分野における問題性の発生要因について検出すべくつとめたが、これらに関する資料は皆無というべきで、よって限られた資料を基として、これらの究明につとめてみた。 つぎにその主な問題点をあげてみると、 門司区の客観状況の変容と少年の非行犯罪傾向については、さきに研究をすませた小倉、八幡の両区のような顕著な相関関係を検出することはできなかったが、若干の傾向を把握できた。その主なものをあげると、(1)門司区が港湾都市としての衰退、旧国鉄の撤退、高速道路の中継地点等の変容から生活保護世帯の増加及び家庭の荒廃化、また旧国鉄アパ-トのスラム化、雇用促進住宅の勤労基地化にともなう青少年の非行、犯罪の基地化傾向、空家、共稼ぎ父母留守宅での集団のシンナ-その他の遊びの散発化、(2)学校関係では校内暴力は低減化に向かうが「いじめは陰瀑な形で潜在増加傾向、また学校側の管理体制の強化から発生する諸問題、よって中学生の生活実態を知るべく実態調査の実施を計画し、中学校側と交渉を重ねたが、学校側の諸事情のため残念ながら実施を断念、やむなく今回は中学校側の生活指導主任並に門司署長委嘱の生活指導委員との数回にわたる懇談会並に問題地域等の現地巡視を重ね、その実態の概要の把握ができた。(3)また詳細な資料収集等をすすめようとすれば人権問題が関係し、調査研究の推進の困難さを痛感した。(4)また家族と学校と地域の濃密な連けいがいかに重要であるか、特に逸脱行動に連る少年の人格形成の未熟さ(耐性の欠如、自己統制力の弱さ、規範導守の未熟さなどが非行化の大きな要因であると叫ばれている現今)、諸々の教育の善処策の急務を痛感した。
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