研究課題/領域番号 |
63510143
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
岩橋 法雄 鹿児島大学, 医療技術短期大学部, 助教授 (20108971)
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研究分担者 |
保坂 恵美子 鹿児島女子大学, 助教授 (30149025)
小栗 実 鹿児島大学, 教養部, 助教授 (90144104)
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キーワード | 教育福祉 / プライヴァタイゼ-ション / コンプリヘンジヴ・スク-ル / 地方自治 / 地域共同体 / 行政能力 / コ-ポラティズム / disruptive・disaffective |
研究概要 |
戦後福祉国家社会の福祉サ-ビス(教育を含む)の実際的な担い手であったのは地方の諸当局であったし、特にイギリスにおいて国家介入の問題にアプロ-チしようとする時には、イギリス福祉国家社会における「地方」の位置(行政能力・範囲・水準)を正確に把握しなければ問題の本質を見誤る危険性が大きい。というのは、国家の介入自体が地方の自律性を暗黙に前提とする基盤の上での中央当局と地方当局との役割領域の分担という形態で進行したからである。そこでは決して中央行政体系の一分肢としての地域的エ-ジェントではなく、地域を統括する政府としての公当局なのである。国家介入のこの特徴と地方の位置は、地方当局によって提供される教育と福祉のサ-ビスの性格および水準に大きな影響を与えている。一見、地方ごとの多様性にみえる現象は決して「地方自治」イデオロギ-一枚岩の方法視角でアプロ-チされるだけでは十分ではなく、地方当局の行政水準、行政効率、サ-ビス内容の質を比較考察する視点を切り離すことができないのである。教育と福祉の協働の問題でいえば、たとえば総合制中等学校(コンプリヘンシヴ・スク-ル)への再編の要因およびその後のドロップ・アウト生徒へのケアの水準は、学校行政と児童福祉行政の総合化・効率化をどこまですすめるかによって大きく影響を受けている。学校教育で「不適応児」(disafective)を再生産している仕組みをいかに克服するかは、中央政府の地方への介入(それによる地方自治への攻撃)みのを問題にするのではなく、地方政府の行政能力の再点検と地域共同体の福祉および教育のニ-ズの発掘と主体の自覚的形成が関連づけられなければならない。その際、教育と福祉のサ-ビスをめぐって構築されてきている、戦後体制下での伝統的な政府・労働界・使用者間のパ-トナ-シップの再編としての地域・住民団体・行政機関のコ-ポラティズム関係が要である。
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