研究概要 |
研究テーマについて2つの研究作業に取り組み、以下のような研究成果をあげた。第1は、教育、心理学、医学、社会事業等の学際的に広汎な領域を網羅し、かつ明治・大正・昭和の時代を貫いて長期に刊行された日本児童学会機関誌『児童研究』(1898〜1944)を分析の対象として、同誌において「精神薄弱」に関連する用語が、いつ頃からどのように使われ始め、その意味内容がどういう歴史的変遷をたどったのかを検討し、戦前のわが国で「精神薄弱」概念がいかに深化・発展したかのアウトラインを把握した。その成果は論文「わが国における『精神薄弱』概念の歴史的研究Iー雑誌『児童研究』の分析を中心にー)(『教育科学研究』第7号、東京都立大学教育学研究室、1988年5月)として発表した。第2は,戦前の精神医学領域の主要雑誌『精神神経学雑誌』・『精神衛生』を対象に検討し、精神医学が戦前における「精神薄弱」概念の形成に主導的な役割を果していたこと、その代表的な概念の内容や「精神薄弱」概念論争の分析を通して戦前の到達点と戦後への課題を明らかにした。その成果は日本特殊教育学会(国立特殊教育総合研究所、1988年9月)にて、「わが国における『精神薄弱』概念の歴史的研究IIー戦前の主要な精神医学雑誌の分析を中心にー」と題して発表し、その内容を加筆修正して同一テーマで日本特殊教育学会誌『特殊教育学研究』に投稿中である。現在はその継続研究として、【○!1】戦後における「精神薄弱」概念の研究史、【○!2】戦前の教育学、心理学、社会事業領域における「精神薄弱」概念の展開過程、の2点についての分析を進め、1989年度に日本教育学会、日本特殊教育学会で報告を予定している。
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