研究課題/領域番号 |
63510144
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
教育学
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
茂木 俊彦 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (70012565)
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研究分担者 |
高橋 智 日本福祉大学, 社会福祉学部, 助教授 (50183059)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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キーワード | 「精神薄弱」概念 / 障害概念 / 『児童研究』誌 / 『精神神経学雑誌』 / 『精神衛生』誌 / エミ-ル・クレペリン / 「精神薄弱」の3分類(白痴・痴愚・魯鈍) / 「特殊児童判別基準」(1953年) |
研究概要 |
近年、障害(機能・形態障害=impairment、能力障害=disability、社会的不利=handicap)の概念と構造に関する理論的研究は、かなり進展している。しかしながら、個別の障害についての概念的検討の深まりはまだ不十分であり、とくに「精神薄弱」概念についてはそれが著しい。それゆえに、本研究においては、戦前日本の児童研究・精神医学・心理学・教育学・社会福祉および障害者教育・福祉実践という6つ領域における「精神薄弱」概念の形成と展開・発展過程のアウトラインと到達点についての解明の歴史的研究に取り組んだ。得られた結果は次のとおりである。 第1に、戦前の「精神薄弱」概念の形成において、精神医学・病理学者が主導的な役割を果し、そして他の学問領域における「精神薄弱」概念の形成は、基本的にその精神医学的概念に規定されていたのである。 第2に、戦前において広く採用された「精神薄弱」の基本概念は、精神医学のエミ-ル・クレペリン(Emil Kraepelin)の3分類(白痴・痴愚・魯鈍)に基づくものであった。しかしながら、1930年代後半に精神医学者と心理学者の間で行なわれた「精神薄弱」概念論争において端的にみられるように、精神医学者も「精神薄弱」児・者の診断と判別という実際的な問題から、心理学的概念(知能指数)も採用し始めたのである。 第3として、心理学の領域における「精神薄弱」概念の形成において特徴的なことは、1930年代以降、ゲシタルト心理学の影響(とりわけクルト・レヴィン)の下での「人格」概念、城戸幡太郎学派の「生活」概念、川田貞治郎に代表される「教育実践」概念が新たに導入されたことである。 第4に、戦前の精神医学や心理学等の「精神薄弱」概念の集約点・到達点は、戦後最初の「精神薄弱」概念の総合的な法的規定である「特殊児童判別基準」(1953年)にほぼそのまま継承されたが、その点で概念形成における戦前と戦後の強い連続性を確認することができた。
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