1.明治期を中心とした教育テクノロジ-の歴史的発展過程を明らかにするために、平成元年度に行なった調査研究は以下の三点にわたる。 (1)学校教育のモノ的世界にかかわる全国の状況については、府県教育史や学校史関連の文献における記述や、教育文化に関する図版・図録・目録類を手がかりに、校舎の建築、教室の設計、校具、文具、校章、制服等の推移と特徴を調査した。(2)実地調査としては、秩父市立郷土資料館、三国町立郷土資料館、大阪市立博物館、西宮市立教育センタ-等を訪問し、保存資料の調査を行なった。(3)研究のまとめと教育史年表の作成をすすめ、研究成果報告書を執筆した。 2.以上の研究調査を通じて得られた知見は次のとおりである。 (1)学校教育のあり方において、モノ的条件がその時々にあって大きな規定要因として働いたこと、近代的教育観と建築や教室の広さ・豊かさ・明るさ、教具の多彩さ等が相即不可分の関係にあること、(2)明治20年代なかばから30年代にかけて近代の学校文化の原型が確立したこと、(3)その際、中央の文部省は大網を提示・勧説したにとどまり、実際は各地方(府県、地域の行政、地域住民)において、自主的・創意的にそれが行なわれたこと、(4)学校づくりにおいて各地方での自主性、創意性にもかかわらず、タテ(中央・地方の行政ル-ト)とヨコ(教育ジャ-ナル、勧業博、教育博覧会等)の豊かなネットワ-クの存在により、おのずから平準的、一元的なレイアウトの共通性も生れたこと、などである。 3.実地調査の成果等はなお検討を加えてしかるべき機会に学会・刊行物等を通して発表したいと考えている。
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