前年度に引き続き帝国大学成立期の関係資料の収集・整理を行うとともに、史料集の編集・刊行に着手した。なお最終年度にあたり、本研究の課題である帝国大学成立の構造的分析に比重を置いた。 1.関係資料の収集・整理ならびに分析 (1)公文書史料……東京大学保存文書および国立公文書館所蔵公文書の分析を行った。これらについては本研究の代表者・分担者および協力者が先に刊行した『東京大学百年史』の関係部分の再調査としての意味もあったが、これから直接的には新たな視点(問題史的)は得られなかった。 (2)私文書史料……新たに「三宅秀文書」「小金井良精文書」「井上哲次郎日記」などの調査を行い、その一部については整理できた。「加藤弘之日記」は明治18年、「矢田部良吉日記」については同18、19年分を復刻したが、加藤のものには帝大創設に関係ある記事が無く、矢田部のものに、帝大創設にあたって森有礼のブレ-ンといわれた人々の関係が若干明らかになる記事が確認された。 (3)新聞雑誌関係記事……東京日日、今日、改進、読売などの各新聞と教育時論、教育報知、東洋学芸雑誌、交詢会雑誌などの雑誌を、明治19年前後に時期を限定して調査・整理した。分析は未だ中途であるが、帝大創設構想がわが国の近代的な国家体制下における全国規模の学術専門教育機関の設置構想と密接に関連していたことが判明し、本研究に重要な視点を与えることとなった。 (4)学術研究団体の沿革調査……各団体の概要をカ-ド化した。 2.史料集の編集・刊行 以上の諸種の研究調査を基礎に、「帝国大学体制」成立史関係資料の観点に立つ史料集刊行の第一次集成を行った。
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