隋唐帝国を軍事面から支えた府兵制の解明をめぐって、本年度はまず関係する史料面の蒐集と整理に務め、かたわら成果のとりまとめをおこなった。その内容のあらましは次の如くである。 1.『吐魯番出土文書』にはとくに関係記事が多い。それらを府兵の地位、制度の運用の面から整理するとともに、登場する人名、地名などの固有名詞をカード化した。そうした作業をふまえて、成果の一端を、中国中世史研究会(88年7月)で報告し、また「唐代西州 (吐魯番) における府兵の位置について」としてまとため。 2.中国新出の石刻関係資料を把握することに務め、その目録(1985・86)を作成した。ひきつづき87・88年分を準備中である。また解散以来出土の全石刻資料(公表分)の目録をまとめつつある。 3.軍府(唐の折衝府)の所在を、各石刻関係資料かち明らかにする仕事を手掛けており、資料もつけた詳細なリストの公表を目指す。 4.房山雲居寺石経の題跋にもき、府兵にかかわる多くの記事があり、その把握に務めたが、関連して石経中の大般若経を現存諸版本との文字の異同について調べた。 5.先年研究した丁兵制問題を再検討し、88年夏の敦煌吐魯番学術討論会(北京)で発表、のち中国語の論文にして『敦煌研究』に寄稿した。 6.唐代社会との関連で、芙風法門寺の歴史と現状に関心をもち、具体的にまとめるとともに、当時地下から新出の碑文(未公表)を入手、他の既出の碑刻資料とあわせて整理し、発表を予定している。 7.隋唐府兵制の前駆をなす西魏-北周期の在り方について、従来の研究成果の整理とあわせ考察した。できるだけ早く発表する。 8.正史や『開府元亀』、『太平広記』などからの関係事項を抽出する作業は現在進行中である。
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