今年度は、ヨシフ=ヴォロコラムスキー修道院の16世紀後半の収入帳簿、とりわけ貨幣徴収関係の帳簿と、穀物の播種・臭覚・打穀各量及び干草関係の帳簿の分析を行うための準備作業に重点を置いた。そのため具体的な研究成果を発表できるまでには至らなかった。具体的作業としては、主として、パソコンを使っての図表の作成、帳簿のファイルへの入力等を行った。また、帳簿の読み込みに際しては、帳簿のファイルへの入力等を行った。また、帳簿の読み込みに際しては、帳簿の記載様式にも注意を払ったが、これに関連して、今後検討の対象としなければならない点は、当該修道院領における村落の形成に関わる問題であろう。これまでの研究によっ、て当該修道院領が六つのプリカースに区分され、そぞれのプリカースがいくつかの村落から構成されていたことは確認できたものの、村落の具体的な存在形態については分析の対象からはずしていた。今年度の研究の中で、帳簿の記載の中に貨幣納入者として、プリカースチク・クリューチニク等の修道院側の役職者と並んで、農民の名が見え、しかも時にはソーツキー(百人長)という形容語を伴っている点は、村落の具体的な分析を行う際に注目しなければならない点ではないか、またこのことは、修道院の所領経営と関連する連帯責任制の問題・土地割替制の問題を検討していく上でも重要な点ではないのか、と考えるに至った。今後は、上記の諸点について具体的な形で早急に発表できるようにすると共に、収入規模等を確定した上で、支出関係の帳簿をも分析対象として、所領経営の全体像を明らかにしていくための研究を行う予定である。なお、ソ連の文献においても、修道院の帳簿類を十分有効に活用した16世紀のロシア経済史に関する研究はソ連でもまだ遅れた分野であることが指摘されており、そうしい意味でも、修道院の帳簿類の分析は意義あるものであり、今後とも帳簿類の収集と分析に力を注いでいきたい。
|