1.白滝幌加沢遠間遺跡の発掘調査を実施し、石刃核・石刃・「札滑」型細石刃核・細石刃・舟形削片・スキー状削片・尖頭器様両面石器・彫器などを含むおよそ2万点の資料が調査された。 2.これまでの「湧別技法」の範疇には属しがたい資料が多数含まれており、「湧別技法」の再検討という課題に一定の前進が見られている。例えば、「湧別技法」の特徴は縦割りにあるとされているが、横割り(半割)後に縦割りするもの、自然面をそのまま甲板面に利用したものなどがあり、多様な製作過程が復元できる。特に後者の場合、その後縦割りされ、礫表を一面にもつ「スキー状削片」が剥がされた例もある。 3.一つの遺物集中区を掘りあてているが、遺跡の構造的研究については、なお今後の調査を待たなければならない。当初、文化層は、一枚でそれほど深くまでは及ばないと予想していたが、部分的な深掘りによって地表下80cmからも遺物が発見された。複数の文化層が存在する可能性が強い。次年度以降に引き継がれる重要な課題であると言えよう。 4.黒耀石の原産地(露頭)と周辺の調査を行なった。その結果、標高差により遺跡の様子が異なる。具体的には、遺物の組合せが異なるという事実が明らかになりつつある。高い所から、低い所へ、「最前線の切出し基地」、「中継基地」、「集落」とでも言えそうな、場の性格の相違がある。幌加沢遠間遺跡は、「中継基地」にあたろう。 5.遠間栄治氏が集めた「遠間コレクション」は、1〜1.5mの深さから出土したとされているが、今回の遺物は、前記の一部を除き、いずれも浅い層から出土している。遺跡付近がソリフラクションの影響を受けている可能性が強い。また遺物に狭まれるように「火山灰」様のものが確認されている。これまでのところ、起源火山や年代は判明していないが、鍵層になる可能性が強い。これについても、次年度以降の課題である。
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