1.前年度に引続き、白滝幌加沢遺跡遠間地点の発掘調査を実施した。発掘資料は、あわせて10数万点に及び、今年度も、「札滑」型細石刃核・細石刃・舟形削片・スキ-状削片・光頭器様両面石器・彫器・掻器・石刃核・石刃が多数出土した。これまで確認されていなかった荒屋型彫器(メノ-製)が出土し、その共伴が正式に確認された。 2.表土中に集中する剥片が、大中小重なりあう状態で広く分布するのに対し、下位の黄褐色ロ-ム層に移行するに従い、スキ-状削片を含む大型の剥片が集中する。しかも小さなブロックを形成する可能性が強い上下の集中が層位的に区別される可能性もあるが、次年度の課題として残された。 3.湧別技法、特に札滑技法とホロカ技法を連関しあうひとつの「システム」として理解し、「幌加沢システム」(仮称)を提唱する。この概念化により、結果として、蘭越技法と峠下技法を内包する「ピリカシステム」に対峙させることができる。より多くの比較研究を要するとは言え、このような分析・概念化により、北海道での技術研究に新たな展望が開かれよう。なお、帯広市暁遺跡の資料の分析を行ったが、ここでも、ひとつの技術型式が単独に存在する可能性は少なく、「システム」概念の有効性があらためて確認された。 4.間層に位置する火山灰の地質学的所見によると、広域火山灰の「洞爺火山灰」である可能性が指摘されている。しかしなお詳細な分析を要することから、その断定は次年度の調査に残された。
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