この研究のポイントは、出土木材の木質部分のみの比重(真比重)の値あるいはそのバラツキが含水率の推測値の精度に影響することである。このため、各地の遺跡より出土した様々な劣化状態及びこれらの様々な樹種のサンプル材(縄文時代〜中世の出土材)約100点を入手し、各資料について空中重量、水中重量、含水率(実測値)を測定し、これらの測定値から出土木材の木質部分のみの比重(真比重)を算出し、そのバラツキがどのようになっているかを検討した。 この結果、出土木材の木質部分のみの比重は、1.30〜1.62の間に分布しており、比重1.35〜1.57の間では1.47に中心を持つ正規分布に近い分布を示していることが明らかとなった。また、この比重は樹種とは関係なく、各資料の劣化状態により異なることも明らかとなった。つまり、含水率(実測値)300%以下では、比重は1.50よりも高い値を示す傾向が認められた。(現生木材の木質の真比重が1.50であるため劣化の少ない材では、埋蔵環境からの異物の沈着により真比重が高くなっていると推測される。)それ以上の含水率(実測値)では劣化状態(含水率(実測値))に関係なく1.40〜1.50の間の値を取ることが明らかとなった。 このようにしてもとめられた比重の平均は、ほぼ1.47の値を取る。出土木材の木質部分のみの比重としてこの値を用いて推測含水率を算出し、実測によりもとめられた含水率と比較すると劣化の進んでいない材(含水率の低い材)では、推測含水率は実測値に比較しやや低い値を示し、劣化の進んだ材(含水率の高い材)では、推測含水率は高い値を示した。しかし、このようにして求められた推測含水率と実測値は極めて高い相関性があることが明らかとなった。
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