(1)考古試料調査ー北海道道東部の網走市郷土博物館、斜里町知床博物館、釧路市立博物館などにおいて、中国など大陸から移入あるいは共通性が高いと考えられる北方的・大陸的色彩の強い考古資料を抽出。それらの特長を調査の上、計測・撮影を実施した。これに合わせ中国の博物館・研究者に北海道の先史文化の概要を紹介するため、資料のスライド撮影も実施した。これら調査した資料総数は約350点である。 (2)中国文献調査ー中国の「考古学報」「考古」「文物」「遼海文物学刊」などから、中国東北部の遼寧・吉林・黒竜江省の報文を抽出。それらのコピ-を作成、カ-ド化するとともに、今後の本研究の推進のためその一部を中国留学生の協力を得て翻訳した。 (3)中国研究者との確認調査ー平成元年6月の天安門事件のため、確認調査など研究交流を一定期間えざるを得なかった。その後、文献など資料の送付を再開し、遼寧省朝陽市博物館、吉林省博物館などから資料の送付とともに当方よりの質問に対する回答が一部きている。 (4)今後の研究集約ー現在、北海道と中国東北部との先史文化交流に関わる抽出事項(資料)としては、新石器時代初頭の石刀鏃、縄文時代早期の条痕文土器(沼尻式土器など)や前期の刺突文土器(シュプノツナイ式土器)などの施文・器形対比、オホ-ツク文化期にみられる青銅製品、婦人像牙偶、玉冠擦文時代の中国製「青銅方形湖州鏡」。この他、オホ-ツク文化期の骨角器にみられる「とうてつ文」「雷文」様の彫刻の対比、アイヌ民族資料にみられる山丹様彫刻の確認とムックリ(口琴)の対比。これらの中から、幾つかについてより実証的に考察し、中国の博物館.研究者との共著報文とし、今後の研究の足がかりとしたい。
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