研究概要 |
本研究の最終年度に当たる平成2年度は、前年度までに完了してある韓国人日本語学習者の要約文調査の結果について、日本人大学生のデ-タと比較検討して、問題を探り、主として要約文の文章構成類型の分析と誤用表現の傾向についての報告をまとめた。 1.本研究で要約文における原文の要素の残り方を調べるための尺度として用いた「原文残存認定単位」の原理を再検討し,10類23種の基準の適用順序を定めた。韓国人・日本人の要約文6種の残存判定作業の結果を新しい単位に基づいて修正し、2種類のX^2検定の結果を求めた。 2.1の検定の結果と原文6種の文章構造上の機能から考えて、残存認定単位を,必須成分・補助成分・準補助成分に区別し、それらの単位が原文中の冒頭部展開部・結尾部のどこに位置するかを手がかりとして、特に必須成分の有無の3区分の組み合わせによって、要約文の構成類型を分類した。その結果を日韓比較したところ、日本人の場合、3区分の必須成分を十分に備えた類型とそれに準ずる型が6種のデ-タで大半を占めるのに対し、韓国人の要約文では異なる類型が認められた。これは、韓国人学習者の日本語の文章理解が不十分であることを示す。語句や文の理解が正しくても,文章全体の主題や構成が把握できなければ、わかりやすい要約文を書くこである。 3.韓国人の要約文6種に見られる誤用表現を分類して作成したデ-タべ-スを活用して、誤用表現の出現傾向を検討した。質的・量的観点から,誤用表現と原文の文章構造との相関について考え、誤用表現の多少と2の要約文の構成類型の分類との間に関連性があるという結果を得た。韓国人の要約文は、文章の理解面と表現面にそれぞれ日本人とは異なる特微が認められたが,中・上級段階の日本語教育の読解・作文指導の中に要約文をより積極的に導入する必要があると思われる。
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